第十一章-後編-



ブツッと声が途切れて、後は風の音がごうごうと。

――その時一陣の風が吹いた。足を掬われそうになる。これで走れているのか否か感覚も麻痺しているので分からないがいちいち構っていられなかった。

ふと暗闇の深くに白い光を見たような気がして微かな希望を胸に抱いた。あの先に何があるかは分からない。だが何故か光の先にあるのが外の景色かもしれないとは思わなかった。白い光がまた瞬く。遠い。でも、もう少し。


……その時だった。

白い光が暗闇を押し広げるようにしてラディス諸共包み込んだのは。


「……、」

目を瞑るのは必然だった。

閉ざした瞼の外側で光が落ち着くのを見計らって開く。

「……!」

声もなく目を開いて驚いた。


ラディスが光に招かれたのは広い一室だった。

ソファーがシャンデリアがといったそんな洒落たものではない。中央に掲げられた虹色の球がぼんやりと光を灯し暗闇の一室を照らすと、肉厚の床に壁、加えて赤みのかかった腸のような鼓動を打つ物が迎えたのだ。

物の表面には血管のようなものが浮き出ていて臓器を思わせた。

そしてそれは幾つもの数を成して、中央の虹色の球を高く掲げている。

「ぁ」

巨人の形態だった際に頭部と思われる箇所にあったもの。心臓部。

……そこに見つけたのは。

「マスター! クレイジー!」 
 
 
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