第十一章-中編-
遠く、声を背にして駆ける。
――もっと速く。あの風が接近を受け付けまいと轟音を立て拒絶するのならそれを物ともしない速さで近付くだけ。無理なことじゃあない、この調子であれば。
バチッと走る電光が金の輝きを起こした。
電動自転車のように。体内の電気がより効率よく筋肉の伸縮から動作を図り速度を増していく。体が勝手に動いて、前に進んでいくみたいに。
金色の電気を頬に走らせ体に纏って。
「あれは……」
フォックスは呆然と呟いた。
まるで流れ星のようだ。深い闇に向かって落ちていく。
「あっ」
風に逆らい、要塞を形作る黒を払って飛び込む。
一瞬だがその奥に虹色の光が見えた。
黒は糸を縫って繕うように直ぐに開いた穴を包み隠して。風が唸る。
「……、ラディス……」