第十一章-中編-
ずっと――その最後のひと言だけは風に溶けて消えた。
「分かってるよ、なんて聞かないからな」
クレシスは続けた。
「昔から。お前は何も分かっていない」
俺たちは戦士だ。
彼だって何もするなと言いたいのではない。恵まれた能力を持って、人々を脅かす悪を打ち払うことが出来るのであればそれは誇りだ。けれどその為だからといって自分という犠牲を払うなと言いたいのだ。
違えぬ意志を持つ者同士。
手を取り合って――互いが互いを殺さないように生かし、全うする為に。
戦うのなら、共に。
「……クレシス」
ラディスは肩を握るクレシスの手に触れてそっと解放しながら、
「俺も大切だよ」
応える。
「皆のこと……ダークリンク。マスターとクレイジーだって」
ここでもクレシスはくっと眉を顰めたが、
「でも」
はたと目を開いて。
「それ以上に。自分の意志だけは曲げたくない」
立ち上がるラディスを見上げる。
「ずっと信じてきた大切なものだから」
ぱちぱち、と青が弾けた。
「ぁ」
一陣の風が妨げて手を伸ばすのが遅れる。
今度こそ届かなかった。
「ラディス!」