第十一章-中編-
黒の要塞が近付く。距離が縮まると途端に風を感じた。
思っていた以上に強く足を掬われそうになる。間違って足を止めたらそのまま風に吹かれ転がってしまいそうだ。リンクは、此方から攻撃を仕掛けても駄目だったと言っていた。多分それはクレイジーが攻撃を拒絶し、跳ね除けているから。
……多分じゃない。居るんだ。
あの中に!
「ラディス!」
けれど不意に腕を掴まれて警戒していた事態が降りかかった。
「っ、」
強風に足を掬われふわりと浮く。
それからは声もなく腕を掴んで止めたその人と風に煽られるがまま飛ばされて地面を転がった。そう派手なものでもなかったが、不意打ちは心臓に悪い。
「いたた……」
ラディスは強く打ち付けた腰を摩った。
「馬鹿かお前!」
声を上げたのはクレシスだった。
「こんな時に何を考えて」
「あの中に」
ラディスは顔を顰める。
「マスターとクレイジーがいるんだ」