第十一章-中編-
ラディスは改めて要塞を見つめた。
見張れど。懲らせど。何かを護るようにして激しく渦巻く黒が要塞を型取り、静かに佇むただそれだけで動きを全く見せない。
自分だってあの黒い靄が語りかけてきたものとは思えない。そうじゃなくてもっと奥、最深部。例えるならこう、人間で言う心臓のような……
まさか。
「ラディス?」
ゆっくりと立ち上がる彼をフォックスは見つめた。
「……分かったかもしれない」
え? とフォックスが洩らしたのも束の間。
「っあ」
駆け出す。
「ラディス!」
――弱点とかあらへんの?
あの時の何気ないドンキーの発言を思い出す。
弱っているのは確かなんだ。それはつまり、弱点と思しき場所にほんの少しずつ、けれどダメージが通っている証拠。でもそれは。
その結果は、多分、本当の意味で助けたことにはならない――