第十一章-中編-



フォックスは不信そうに眉を顰める。

「……声?」

ラディスは小さく頷いた。

「子供の声だった」

頭の中で響いて再生されるその声はまだよく覚えている。

あれはマスターとクレイジーのものだった。

「また見せられたのか」

ラディスは首を横に振る。

「声だけだったよ。それ以外は何も」
「双子は居なかったのか」


……え?


「ラディスは意識を失っていたんだぞ」

フォックスが口を挟んだ。

「分かるはずがない」
「じゃあ双子は何処に行った」

たじろぐ。

「あの黒い靄がそうだってのか?」
 
 
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