第十一章-中編-
……返す言葉もなかった。
あれだって結局は自分だけ犠牲になる覚悟で飛び込んだのだ。神様はちょっと俺に優しくしすぎじゃあないか。
なあ。……マスター。
「何があった」
完全な不意打ちだった。
「あの魔獣の胃袋の中で」
……胃袋。
「あまりラディスを困らせるなよ」
少し離れていたフォックスが戻ってくるなり気を遣って遮った。
「テメェはすっこんでろ」
「俺はまだお前を信用していない」
「っは。妙な質問仕掛けて精神状態を侵すとでも?」
フォックスはきっと睨んだ。
「平気だよ」
「精神的な問題は本人にも分からな」
「ありがとう。大丈夫」
今度はラディスが遮るとようやくフォックスは口を閉ざした。
「……俺は何もしてないよ」
ダークリンクは端耳に視線を要塞へ。
「声が聞こえたんだ」