第十一章-中編-
ラディスはのっそりと体を起こした。
「……後ろ」
言われて、振り返る。
「……!」
「ラディスが魔獣に丸呑みにされて、十数秒経った辺りだ。暴れ回っていた魔獣が突然苦しみだしてそれから――体を突き破って黒いエネルギーが放出された」
驚きのあまり、目を見開く。
「お前は真っ二つになった魔獣の中から放り出されたんだ」
――黒が渦巻く。
「何も覚えてないか?」
「……いや」
ラディスは呆然と口を開けた。
「でも、あれは……」
巨人でなければ剣でもない。
――魔獣の姿を崩したそれは霧や煙が封鎖する巨大な要塞へと変わり果てていた。渦巻くそれらの奥には薄っすらと虹色の光が窺える。後は鉛筆で乱雑に書いたかのような黒が支配しており、ごうごうと不穏な音を立てている。
いや。それはさながら鳴き声かのように。
「分からない」
フォックスは要塞を見つめた。
「だけど放っておくべきではないと思う」