第十一章-中編-
ぎくりとした。それに反してそろそろと振り返る。
降り注ぐ全ての攻撃をエネルギーの放出と同時に弾き、浴びせられた炎を体に纏いもうもうと煙を上げながら地を駆ける魔獣の姿が其処にはあった。
ひと目でその生き物が狂っているものだと分かる。誰も見ていないし何も感じてはいない。世界を壊すという目的に捕らわれ突き動かされるようにして一心不乱に。見境がなければ目標もなく。ただ、その時偶然。
魔獣の駆ける道に、ぽつりと。
「ぁ」
その人は立ち竦んでいて。
「フォックス!」
ラディス。
「え」
お前は優しすぎる。
無我夢中で駆け出して、飛び込んで、押し退けた。
差し込む影に顔を上げると大きく開かれた口がもうすぐ目の前にまで迫っていて。
「ラディス!」
その瞬間。
頭の中が白い虫に蝕まれて何もかも分からなくなった。