第十一章-中編-



殴りつけられた箇所が大きく沈み、血の代わりに真っ黒な霧や煙が噴き出す。

その後ガノンドロフは難なく後方に飛び退き着地したもののあの一撃を食らっても尚目の前の魔獣は一向に倒れる気配がない。

「ギ……ギギ……」


どうすれば。


「あんなんどうやって倒せばええの……」

ドンキーは弱気な声を漏らした。

「なにやったって形態変えて切りがないやん。弱点とかあらへんの?」

……弱点か。

「だけど弱ってるのは確かみたいだよ。動きがさっきより鈍いし、それに」

ラディスは自身が先程受けた背中の傷を思った。

「まだ回復せぇへんの?」

マスターが望むならこの程度の治癒は何てことはない。けれど自分たちが挑戦する度その回復速度が落ちている。クレイジーを止めようとしているのは彼も同じ、神力を使い果たして長い眠りにつくはずだったのに無理矢理に生かされ、今は空っぽのはずの神力を練り出して庇っている。

何も壊したくないんだ。けどこのままではマスターが先に力尽きてしまう。

俺だって同じだよ、誰も何も失いたくない。


どうすることもできないのが正解なのか?

そんなの、納得できるわけ――


「フォックス!」 
 
 
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