第十一章-中編-
――悲痛な声が響き渡る。
「ラディス!」
魔獣は止まらない。過ぎた先で踏み堪え、切り返して向かう。背中を裂かれ、地面に倒れ込んだラディスが痛みに悶え苦しむのを涙を浮かべて必死で揺すりながら、ドンキーは魔獣を交互に見た。
「ぁあ、」
距離が狭まる――
「はああぁあぁああッ!」
襲いかかる魔獣の後方から。剣を数度振るってマルスが飛んできた。
気迫の込もった声を上げながら魔獣の背後に、もう一度地面を蹴り出して跳躍。体を捻り剣を薙ぎ払って尻尾を斬りつける。
命中。が、浅い。
「ロイ!」
魔獣の側面から飛び込んでいく影がひとつ。
「おぉおおおぉおおおッ!」
腰に据えた剣を。一閃。突っ切る最中に引いて払う。
「アアァアアァアアアアアッ!」
尻尾が切断されると魔獣は鳴き声を上げながら軌道を変えて地面に転がった。痛覚はあるのだろうか、先程より体勢を立て直すその動作が遅い。ラディスはようやくその場に膝をついて起き上がった。寒い。回復の速度も落ちている。