第十一章-中編-
巨大な獣――魔獣が飛び出したのは直後のことだった。
「っ、」
直ぐ近くにいたメンバーには目もくれず一直線に。向かった先にいたのは精密射撃による援護を行っていた特務精鋭機関『D.H』のスナイパー達。
「うわああぁあああッ!」
悲痛な声が響き渡った。
「ぁ」
此方を真っ先に襲わないのは傷付けたくないというマスターの意思だろうか。
魔獣がスナイパー達に襲いかかるのをラディス含む戦士たちは絶望の声を漏らし、ただ呆気にとられて見ていた。恐怖に引き攣るスナイパーの腕を前足で踏み付けて捕らえ、見下ろす。鋭利な牙を剥き出しにして勢いよく喰らい付く。
頭を振るって皮を肉を引き千切り、臓器を抉り出して。
「やめろ」
……赤を散らして。
「っファルコ!」
フォックスが気付いた時には遅かった。
「やめろおおぉおおお!」
無我夢中で駆け出した。とても見ていられる光景じゃない。
ただ一人が飛び込んだところでどうにもならないことくらい知れている。それでもほんの少しでも、注意が逸らせたら――!