第十一章-中編-
……限界だ。
戦士たちは心身共に疲れ果てている。留まることを知らない、クレイジーハンドの破壊衝動。それを望まず能力で傷の再生を繰り返す、兄のマスターハンド。
世界だけじゃない。
いずれ壊れてしまうのは。
「下がれ!」
はっと現実に引き戻された。見上げる。
黒い霧や煙の集合体。戦いの最中不自然な形で硬直したそれは針で突ついた風船が破裂するかの如く勢いよく弾けて、ぐるぐると。五本の剣は形を崩してまた新たに形を成す。ラディスは思わず目を見張った。
「……あいつ!」
「まだ形態が変わるってのかよ!」
サムスがすかさず銃を構えて撃ち込む。
……だが。
「効いていない!?」
広げた紙をくしゃくしゃに丸め込んで圧縮するように。霧や煙は激しく混ざり合い絡まって巨大な獣の姿を作り出す。
地面に付いた四つ足を力強く踏み込んで牙を剥き、大きな口を開いて吠え声。
「……!」
鞭打つように尻尾を払った。
「迎撃用意!」