第十一章-中編-
あんな、化け物が――?
頭の中で人の姿だった頃の彼が浮かんでは消え、浮かんでは消えた。その姿というのも濃く印象に残っていた男の姿は、弟を名乗る少年と共に現れた時同じく少年の姿となって、それが今は。
どれが本当の姿であるかなど、検討もつかない。
けれど驚いたことに剣は己の巨体を振りかぶった体勢のまま動きを止めたのだ。
「まさか……本当に……」
「……みてえだな」
その声にフォックスは振り返り、二度驚いた。
クレシスである。けれど様子が違った。彼は左肩に大きな傷を負っていたはずだ。確かにあの後直ぐにマリオが応急処置を施したが、それで誤魔化せるような浅い傷ではない。なのに次に彼が庇っていた右手を退けると包帯はするりと解けて。
傷は、綺麗さっぱりと無くなっていたのだ。
「覚えがあるだろ?」
はっとする。
「地下にいた時と同じ。青白い光が傷を癒した」
クレシスはにやりと笑って。
「いんや。俺たちの場合、“修復された”と言った方が正しいか?」