第十一章-中編-
「……なんだ、これ」
ただその言葉だけだった。
――黒い煙や霧のようなものを纏い、唸る。
低く悲しく尾を引いて。風だと思っていたのはこいつの唸り声。
天空大都市レイアーゼの中心部に高く聳え立つ司令塔と同等かそれ以上か、誰もが見上げる全長は今までのどの生き物とも比べ物にならない。
正真正銘。瞼を擦れど覚めない悪夢。
――本物の、巨人。
誰もが言葉を失っていた。
巨人とは称したがそれだって下半身はすっぽりと地面に埋まり、窺えるのは上半身だけだったのだ。……それで、あの大きさ。頭部と思われるそこには人間らしい目や鼻や口といったパーツは見当たらず、激しく渦巻く煙や霧の中包み隠されるようにして虹色の球体のようなものが仄かな光を放っている。
その存在にただ圧倒され暫くの間言葉ひとつなく。
何故、突然現れてどう影響を及ぼすのかさっぱり検討もつかない。
ただひとつだけ分かるのは。
仮にあれが敵として猛威を振るった場合。
――想像を絶する被害になるだろうということだ。