第十一章-中編-
――次の瞬間だった。
食い破られたマスターの中から黒い煙や霧のようなものが噴き出し、それは天まで立ち昇ったかと思うと一気に降下、クレイジー諸共まるで喰らうようにして包み込んだのだ。近くには、腰を抜かしたマルスがいる。ラディスは拳を握り手のひらに爪を食い込ませて硬直を解くと、地面を蹴り、飛び出した。
「くっ……」
物凄い風だ。何とかマルスの元へ駆けつけたラディスは彼の腕を掴むと、マスターの中から噴き出してきた煙や霧のような黒いそれが双子を覆い隠すように激しく渦を巻くのを呆然と見上げた。くっと眉を顰めて、叫ぶ。
「マスター! クレイジー!」
ごうごうと風が唸りを上げている。
――いらない。
声が聞こえた気がしてラディスは顔を上げた。
こんな世界はいらない。
「……クレイジー?」
だから。
「コワシテヤル」