第十一章-中編-



どうしたことだろう。

マルスは剣を振り下ろさない。

「ぁ」

小さく声が洩れたが恐らくマルスだろう。何かに気を取られている。

遠く見ているだけでは分からない。かといって自ら近付き確かめるつもりにもなれなかった。目を凝らす。現在クレイジーは体を折り曲げマスターの胸に顔を埋めるようにしている。泣いているのを見て躊躇ったのだろうか。

「あぁ……あ……」

それにしては様子がおかしい。

ゆっくりと後退するその顔の青ざめているのが分かる。

「何してんだよ。早くそいつを」


ぐちゃ。


不審な音は無線を通して繰り返し聞こえてきた。

それは何処か聞き覚えのある――


……まさか。


「クレイジーが」

フラッシュバックする。

「……て」


赤い髪の少年の背に青の髪の少年が重なる。


「マスターを、食べて……」
 
 
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