第十一章-中編-
「彼らはただの勝手で世界を壊そうとした」
違う、という声が喉につかえた。
「確かに君は悲劇的な過去を見せられたかもしれない。でも君だけだ。事実彼らは沢山の人間を殺めている。そんな彼らをどうして許す必要がある」
マルスは静かに柄を握った。
「僕たちにとっては、ただの人殺しだ」
――返す言葉もなかった。
誰も知らない彼らを知っている、そんな自分だけが彼らの理解者だからこそ彼らを分かってあげたかった。許したかった。だからきっと皆だって何処かで通じ合えて和解できるのだとそんな淡い期待さえ抱いていた。
けれど事を起こした後の今ではあまりにも遅すぎたのだ。
どんな真実を重ねたとしても彼らの目には、ただの神様じゃない。無邪気で残酷、身勝手な……ただの人殺し。
――許せるはずがなかったんだ。
「君は優しすぎる」
マルスは柄を握る力をふっと緩めた。
「だからその分僕たちが剣を取らなければならない」
逆手に持ち直し、ゆっくりと持ち上げる。
「君には出来ないことだろう」
それは。
彼らなりの優しさだった。
「ラディス」
誰かが静かに名前を呼んだ。
「……終わらせよう」