第十一章-中編-
えっ?
次の瞬間、真横からクレシスが突っ込んできて。横に倒れかかりながらラディスが目にしたのは彼の左肩が見えない何かによって大きく裂かれる瞬間。
「クレシス!」
双方地面を擦りながら勢いよく倒れたが、ラディスは真っ先に起き上がると左肩の傷を庇って呻くクレシスを慌てて抱き起こした。
彼が顔を歪めるのも当然、どくどくと血の溢れ出るそこは思っていた以上に深い。
「ぅ、るせ……騒ぐんじゃねえ……っ」
クレシスは眉を顰めてラディスの胸ぐらを掴み引き寄せる。
「聞こえるか、てめえら……」
そうか。気が動転してすっかり忘れていた。
この襟に付けてある小型の無線はマイクの役割を果たすのである。
「今のクレイジーには手を出すな……」
「っ、なに言ってんだよこんな時に!」
「でかい声も出すな、っくそ……」
ラディスはクレシスをやんわりと離して話を繋ぐ。
「皆、聞いてくれ」
焦る気持ちを殺して声はなるべく抑えた。
「クレイジーは目が見えていない」
ラディスはちらりと目を遣る。
「断定は出来ないが音を頼りに攻撃しているのは確かだ」
そこでフォックスはようやく銃を下ろした。
「だからってこのまま放置しろっての?」
過ぎた緊張が高まる。