第十一章-中編-
「えっ」
例えばそれが祝い酒だったならどんなに良かっただろう。
この世界を手中に収めようとする悪い奴をどうにかこうにか倒しました、それじゃお祝いに酒でも酌み交わそうか。金色のシャワーが吹き上がる。
けれど妄想は絶たれた。金色と思い込んでいたそれは実際には赤ワインのような深紅に染まっていて、匂いも麦とは程遠い、鉄のような鼻につくそれだった。ぶしゃああ、と尾を引いて後から後から噴き出してくる。ボトルの口から、ではない。
――頭を無くした、人間の首の切り口から。
「うわああぁあああッ!」
小さく声を洩らしたのはフォックスだったが、悲鳴を上げたのは別の男だった。
なんだ。何が起こった。どうしてクレイジーの体を起こそうとした男の首が、何の前触れもなく刎ねられたのだ。逆恨みか。そんなはずは。じゃあ誰が。
「……触らないでよ」
その声の主は声を跳ねて不気味に笑った。
「僕にも。兄さんにも」
ゆっくりと頭をもたげる。
「……嘘だろ」
腕を立てて、ゆらゆらと揺れながら体を起こし立ち上がる。
「なんで」
まだ真新しい血が足下の血溜まりにぽたりと滴った。
「なんで生きてるんだよ……!?」