第十一章-中編-
そういえば。マスターは自分たちに限定して、例えば真実に触れてしまわないよう注意を逸らさせたり、遠隔操作によって此方の攻撃力を一時的に低下、或いは無効化したり僅かな時間ではあるが、行動を制限させることが出来た。あれはいわゆる『ゲームのキャラクター』である自分たちの中にある『設定』を弄ることが出来る彼だったからこそ、可能だったわけで。
そんな管理者である彼が死んだ。データ管理を行うメモリーカードのような役割を果たしていたかもしれない。よく考えてもみれば恐ろしい話だが……
「何も無かったんだからよかったじゃねえか」
「分からない人ですね。それが気掛かりだと言ってるんです」
「要するにあれが生きてるんじゃないかって話だろ」
言いながら、マリオはマスターの遺体を顎でしゃくってみせる。
「いくら神様だっつってもなあ」
疑りすぎじゃないのかと苦笑いを浮かべて。
「……ちょっと待って」
ルイージがぽつりと言った。
「確実とは言い切れないけどマスターは死んだんだよね」
まあ、とマリオは顔を顰めて返す。
「それが僕たちの存在により生きている可能性がある……」
「何が言いたいんだよ」
「要するに有り得ないんだよ。在るべき死を覆すなんてことは」
「だからそれをさっきから言ってんじゃねえか。大体そんなデタラメなこと」
いくら神様だからって出来るはずが――