第十一章-前編-
彼らは……死んだ。確かに死んだ。
死人に口無しと言うがだからそうしても構わないという理由にならない。彼らにも彼らの望んだ最期というものがあったはずだ。
少なくとも弟のクレイジーは双方共に望んだ最期とも思えないが。
それでも、せめて埋葬くらいは。
「未来の為だよ」
ラディスの表情には暗く影が差している。
「……分かりました」
研究者たちに未来を奪われた兄弟が今度は全てをもぎ取られる。
「最高指揮官より命令だ」
ラディスは携帯を仕舞うと静かに切り出した。
「創造の神マスターハンドと破壊の神クレイジーハンドの遺体を回収する」
微かにざわつく。
「ラディス」
「命令なんだ」
「でも」
「分かってる」
上の命令には逆らえない。
「回収後は速やかに撤退して屋敷で待機」
沈黙の中、締め括る。
「……以上だ」
戦いは終わった。
欲にまみれた醜い争いではない。それは二人の少年が今から気の遠くなるほど昔、幼い指と指を交えて誓い合った小さな約束を。長い時を跨いで果たそうとした。
とても、寂しい物語。
これでよかったんだよな。
……マスター。