第十一章-前編-
「素晴らしい」
ラディスはその場から動かず辺りに目を走らせた。
「感銘を受けた。これ以上の言葉はない」
……居ない。
司令塔からでも此方の様子が窺えるのだろうか。
「さて」
多分、双眼鏡か何かだろう。
「君たちに頼みたいことがある」
ラディスは姿を探すのを諦めて耳を傾ける。
「二人の遺体を回収してきてほしい」
え、と声を洩らしそうになった。
「それって」
「分かるだろう。彼らは他と異なる未知の生物なんだ」
その人は嬉々として続けた。
「人類の進化と発展。それに繋がるヒントを得られるのなら」
「解剖も止むを得ないと」
思わず口を挟んだ。電話の向こうで含み笑いを浮かべているのが分かる。
ラディスは密かに眉を顰めた。