第十一章-前編-
「っ、」
この場の空気に見合わない軽快な着信音が沈黙を破った。途端慌ててズボンの後ろポケットに仕舞っていた携帯を取り出すラディスを横目にクレシスが、
「お前よくそれ無事だったな」
と半ば呆れたような調子で言って小さく息を吐く。
「……はい」
「君たちの活躍」
切り出した声に目を開く。
「しっかり見させてもらったよ」
この声は。
「御苦労だった」
レイアーゼ最高指揮官。
司令塔の最上階の一室に悠々と構える絶対君主。
名前は――
「呑気なもんだな、お偉いさんは」
嫌みたらしく吐き捨てる。
「高みの見物ってわけだ」
クレシス、と小声で制してひと睨み。
「……ありがとうございます」
盛大な舌打ちが背中に刺さるが無視をして滞っていた返事を返す。