第十一章-前編-
右手を、左下へ構えて右上へ向かって薙ぐ。
バチバチと弾ける音が空を劈き、全ての音を静止させた。
……ありがとう。
赤々とした鮮血が花を散らすように舞った。
その瞬間、魔法陣はひび割れ砕け散り使役の主の少年は。
どさりと地面に横たわった。
「え」
攻撃の手を止めたのはクレイジーも同じだった。
「あれ」
視線の先に留めた光景に思考が停止する。
「兄さん?」
ラディスは立ち尽くした。
右手に残された少量の電気が小さく声を上げるのが、何となく拍手の音のようにも聞こえた。その音を密かに耳障りに、煩わしく感じながら。
「……マスター」
その人の名前を呼ぶ。