第十一章-前編-
たん、と腰に備え付けられていた六角形の機械を叩いて僅かに浮いたところを前方に払い蹴り出す。続けて袖の中に隠し持っていた同じ機械を左手に落とし、先程の機械より少し下方に目掛けて放ると同じく蹴り出して。……すると。
機械は空中に留まり、人ひとりは包み込めるであろう六角形の水色のバリアを張り出したのだ。それもただのバリアではない。受けた光線弾をそっくりそのまま撃ち返す優秀な反射性能付きである。マスターは目を細めて。
「くだらない」
刹那。マスターの目前に同じ六角形の水色のバリアが張り出された。
「無駄なことだ」
彼らの戦闘能力も個別武器による性能、効果も全て把握済みだ。
例え不意を突いたつもりでも対策方法は万全。
程度の知れた攻撃など――
「無駄じゃないよ」
小さな声がぽつりと応えた。
「今だ、ゲムヲ!」
跳ね返された光線弾の前に飛び出す黒い影。
ゲムヲが手に持った真っ黒いバケツの口を光線弾に向けると、どうしたことか光線弾はみるみる内に吸い込まれていった。光線弾が止んで吸収を終えるとゲムヲはバケツの取っ手を両手で持ってぶんと大きく振り回し一回転、ある程度接近していたところマスターの張ったバリアに目掛けバケツを返す。
黒々並々とした液体が降りかかった。