第十一章-前編-
げほっ、とクレシスは咳き込む。
「……何とか」
クレイジーは左腕を力無くだらんと垂れて振り向く。けた、けた、と。肩を小さく震わせて瞳に狂気を宿し、口角をにやり吊り上げて不気味な笑い声を上げる。
「ひひ、あは、あはははは……!」
――どう考えてもおかしい。彼の様子が先程と打って違う。
狂気以上に不自然だ。
「ちっ」
精鋭部隊の連中も今のですっかり怖気付いちまっている。
クレシスは視線を走らせ、舌打ち。
「やれるか?」
「いや。多分無理だと思う」
クレイジーは変わらず狂った笑い声を上げている。
「……違げぇねえ」
隙を詰めた理不尽な攻撃判定に反応スピード。でたらめな行動パターン。
どれを取っても敵うはずがない。
――どうする?