第十一章-前編-
「が、ッ」
刹那クレシスの体は蹴り飛ばされた。
正面ではない。クレイジーの攻撃範囲から弾き出すかの如く、横から。
「ぐっ」
クレシスの体が地面を跳ねて転がる最中。その男もまた、クレシスを蹴り飛ばす際同時蹴り出して範囲を脱していた。クレイジーの蹴りが赤い線を引いて空を切る、そこへばちばちと音を立てて雷撃を放つ。けれどそう上手くはいかない。
ゆらり。笑みを口元に残して振り向いたがふっと体勢を低く、クレイジーは地面を蹴り出し攻撃を潜って接近。
大きく拳を引いて振るうのを先読み、自身の真下へ雷撃を放って押し出す力で跳ね上がり空中で前転してクレイジーを飛び越える。男は振り向きつつ着地、休む間もなく足下の地面が不自然に盛り上がると、次々と突き出る白銀の棘を後転を加えて下がりつつ躱し、最後大きく蹴り出し飛び退いて――ちょうど、地面を摩りながら留まり横たわったクレシスの傍らに着地を成功させる。
「っは……っは……」
クレシスは息を弾ませながら何とか腕を立てた。
「ラディス……」
――強引な手を使ってクレシスを危機から脱したのはなんとラディスだった。
「すまない」
ラディスははあっと息を吐き出す。
「ああするしか他に方法が思いつかなかった。大丈夫か?」