第十一章-前編-
「ちっ」
隙を突いたつもりで雷撃を放ったが避けられた。直後接近してきた男を蹴り飛ばしその場にブロックノイズを残してマスターは姿を掻き消す。
「おわっ」
一方その頃クレイジーもあと少しといったところで姿を消してしまっていた。寸前振りかざしていたドンキーの拳は虚しく空を切り、着地と同時前のめりになるが何とか踏み堪えて。後続のリムも速度を緩めて立ち止まると、腰に手を置いて辺りを見渡した。
「あそこでしゅ!」
瓦礫の積み重なった建物の跡。
その上にマスターとクレイジーは肩を並べていたのだ。
「兄さん!」
はっと気付いて声を上げる。
「余計なことすんなよ!」
どうやら瞬間移動したのはクレイジー自身の意思とは違うらしい。
「あんなの、僕だけだって」
マスターはゆっくりと視線を向ける。