第十一章-前編-
クレイジーははっと左に逸れて躱した。
突き出されたダガーナイフが頬を掠めたと同時、振り向き際にその男を回し蹴りで蹴り飛ばす。しかし続けて筋肉質の男が向かってきて拳を躱し、左肘を振り上げて男の首根っこに落とす。休む間もなく別の男が向かってくるのをクレイジーは先程の筋肉質の男の腕を掴んでぐるっと振り回し、投げ飛ばして命中させる。
次から次へと、何度も何度も。
「雑魚は雑魚でもよく訓練されているのでな」
隊長らしき男はふんと笑う。
「その程度の殺気ではまず怯まん」
マスターは今しがた剣を振り上げた男の胸板を蹴って踏み台に跳び上がって空中で後転、体を捻り回転をかけて待ち構えていた男たちを右足、左足と蹴りに巻き込んで薙ぎ倒す。最後、男の顔面を踏みつけて後転、着地と同時に接近してきたまた別の男たちを透過した衝撃波でまとめて弾き飛ばした。
「……成る程な」
自信があるわけだ。ひとつひとつはDX部隊の連中に取るに足らないものだが軽くても必ずダメージを与える動き。所詮は数だけと甘く見ていたが、だからこそ連携を繋げやすく蓄積したダメージを回復させる隙もない。
『D(Doberman).H(Hunt)』の名が示す通り、厄介な犬共だ。
……なら。
出し惜しみもここまでだな。