第十一章-前編-
少女の正体はサムス。
今まで姿を見せなかったのは各地に散らばっていた精鋭機関に直接応援要請を出していた為。――特務精鋭機関『D.H』はこれだけ大規模な集団組織でありながら固定の大型拠点を持たず、レイアーゼ各地に構えた小さな拠点にバランス良くメンバーを振り分けて備えているのだ。
襲撃による損失を最小限に抑える為らしいが、今回ばかりはそれが手間だった。
蹴りを左腕で受け止めて銃弾を部分的に発生させたバリアで防ぎつつクレイジーはぎりっと奥歯を噛み締める。
次の瞬間バチバチッ、と赤い閃光が左腕を走ってサムスは退避の体勢に。
が、ひと足遅れて衝撃波に弾き飛ばされる。
「……全く」
男はその先でサムスの体を受け止めて。
「変に挑発するからだぞ?」
「悪かったわよ」
むすっとしてサムスはその男、ファルコンから離れた。
「数ばかり増えたところで」
クレイジーは殺気をオーラとして纏い、ゆらりと。
「無意味なんだよ。僕たちには勝てない絶対敵わない」
「本当にそうかしら」
サムスはにやりと笑う。
「その“量”が“質”も兼ねているのだとしたら――?」