第十一章-前編-



――そういうことか。

奴がわざと声を張り上げて指揮をとっていたのもメンバーをチーム分けして役割を分担していたのも全て見せかけ。彼らの狙いは本質から注意を逸らし此方に“敵は一部隊だけ”と思い込ませることで体力の消耗を図ること。

そして本命の大部隊。

「っ、」


特務精鋭機関『D.H』の到着まで足止めすること――


「よく仕付けられているじゃないか」

マスターは全ての攻撃を透過した衝撃波によって撃ち落とした上で笑み。

「お高い首輪をかけられてるんでな。迂闊にゃ逆らえねーんだよ」
「はっ、よく言うぜ」

グレーの色をした長髪の男がクレシスの隣に並ぶ。

「噛み付かない癖に牙だけは立てやがって」

クレシスは少しも目もくれず。

「……逆らえないのはどっちだか」


一方でクレイジーも急な展開に思わぬ苦戦を強いられていた。

「くっ」

精鋭機関所属の有能なスナイパーによる精密射撃を躱しつつ空を舞う戦闘機からの機銃を防御、そして。蹴り主体の猛攻が止まないこの少女との接戦。

「息が上がってるみたいだけど」

少女は挑発的に笑みを浮かべて回し蹴り。

「子供にはまだ少し早かったかしら」
 
 
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