第十一章-前編-



「うざい」

ラディスははっと顔を上げた。

刹那、視線の先でクレイジーを中心に半径二メートル、波紋のように赤の衝撃波が足下から放たれると、それまで接近していた全てを一瞬にして吹き飛ばしたのだ。その中にはもちろんまだ幼い子供たちも含まれている。

「そんなに僕たちの邪魔をしたいの?」

よりにもよってクレイジーが狙いをつけたのはナナだった。

「……そんなに殺されたいの?」

ゆっくり。

「腕が折れようが脚がもげようが」

ゆっくりと。

「生きてさえいれば」

近付く。

「僕たちが元通りに直してあげるのに」

……接近する。

「うぐっ」

クレイジーはナナの胸ぐらを掴むとおもむろに高く持ち上げた。

「馬鹿なの? 馬鹿だよねぇ、邪魔なんてするからこうなるんだよ?」

くくっと笑みをこぼしたがふっと消して。

「……言っただろ」

左目に赤黒い光を灯す。

「僕たち、神様なんだって」
 
 
17/60ページ
スキ