第十一章-前編-
――距離を離されたか。
蹴り飛ばされたマスターは一度地面を跳ねたがすぐに空中で体を捻り体勢を持ち直すと次で地面を軽く蹴って後転、片膝を付いて着地。……指揮者を仕留めたところで彼らの連携に乱れがあるとも思えないが、ああも大声を張られては気に障る。
ふらりと立ち上がって。マスターはおもむろに視線を遣った。
「フォックス」
一方でマスターから視線を外さないままクレシスが静かに呼ぶとフォックスはファルコと顔を見合わせ頷いた。続けてマリオがキュッと手袋を引いて、ルイージと同じく前へ。それぞれ右手のひらと左手のひらに赤と緑の炎を宿すと息を揃えて。
何の前触れもなく、打ち出した。
――炎は斜めに飛んだが交差するかと思いきや衝突後、続けて爆発。爆音が空を劈き周辺が黒煙に巻かれる。炎自体小さなものとはいっても火薬をたっぷりと詰め込んだ謂わば爆薬のようなものだったのだろう。
「後衛は任せる」
何やら小声で言葉を交わしているようだが聞き取れない。
「分かった」
煙が目に染みて状況も把握できない。
咳き込んでいた、その時。