第十一章-前編-



「……クレシス」

フォックスが静かに呼ぶとクレシスもそっとラディスを解放した。

「悪かったよ」

小さく吐き捨てられた言葉の後、沈黙が流れる。

「で、どうすんだ?」

沈黙を破ったのはほんの些細な疑問だった。

「奴さんは一向に顔を出しやがらねえ。あれで倒せたっつう確証もねえしよ」
「ならじゃんけんして誰か様子見に行くってのはどう?」
「てめえバカ状況を見ろ不謹慎だろ」
「このまま立ち往生するよりマシだと思うけど?」

そうしてファルコとカービィが言い合っている間に。


――その時は訪れた。


「ッッ、」

大きな爆発音と共にアーウィンの残骸が弾け飛ぶ。

目を見張れば、見えたのは青。

「てめえが噂なんかすっからだぞ」
「言い出したのは自分じゃん」

黒煙に巻かれながら現れたのは大きく真っ青な球体。天辺がひび割れ、やがて砕け散ると見覚えのある青い髪が風に靡いて。

「やれやれ」

すっと瞳を開く。

「聞き分けの悪い餓鬼共だ」
 
 
10/60ページ
スキ