第十一章-前編-



「俺たちを信じるんじゃなかったのかよ!」

クレシスは傍らに膝を付くとラディスの胸ぐらを掴み、引っ張り起こした。

「もうよせクレシス、それ以上は」
「そうだよ怪我人なんだから」

マリオとルイージは口々に、クレシスは顔を顰める。


「……ごめん」


今度ぽつりと言ったのはラディスだった。

「ごめん、俺」

クレシスははっと目を開く。

「助けられなかった」


瓦礫に足を挟まれて動けなくなっている人がいた。

押し退けようにも一人では非力で、その間に強い揺れと、頭上に影が差して。


まだ、息はあったのに。

自分を優先するしかなかった。


マスターとクレイジーを止めなくては。街の人々を救わなければ。

抱えきれない想いを果たすには足りなかった。ダークリンクの力を借りたところで生きるのが精一杯だった。沢山の命を犠牲にしても、それだけだった。

「ごめん」

俺は、馬鹿だ。

自分だけでは何ひとつそつなく熟せない。

「……ごめん」


駄目だなあ。

こんな時になっても、俺、かっこ悪いなあ……
 
 
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