第十一章-前編-
そうして聞くだけなら便利な能力かのように思えた。が、その結果がこの有様だ。相応のリスクが体に痛々しく浮き出ている。
その全力が。
双子には通用しなかった。
「お前たちの作りや事情は知らないが」
マリオは相変わらず顔を顰めたまま、
「どんな生き物も体の内部というものは物凄く繊細なんだ。いくら治りが早かったり痛みを和らげたところで、加減を間違えれば大変なことになる」
ラディスは黙っている。
「……だからお前は馬鹿なんだよ」
ぽつりと言ったクレシスに視線を上げた。
「馬鹿」
拳を握り締める。
「ばかバカ馬鹿ばかバカ馬鹿ばかバカ」
おい、と口を開いたファルコの肩をフォックスが掴んで止めた。
「もうひとつおまけに馬鹿! 出血大サービスで大馬鹿野郎だッこの馬鹿!」
誰も何も言えなかった。
「なんで、なんで分かんねえんだよ!」
だって分かるんだ。
痛いくらいに。
「死んだら意味ないんだぞ!」
――彼の頬を伝いこぼれ落ちる、涙のその理由(わけ)が。