第十一章-前編-
名前を呼ぶ声が。
触れる手の温もりが。
――あまりにも懐かしくて。
「血ぃ付いてんじゃん」
ひと頻り咳き込んだ後でラディスは血の付いた右手をぼうっと見つめて。
「ゼルダ、手を貸してくれ」
「はっはい!」
「転べラディス」
マリオに指示されるがまま仰向けに寝転ぶ。
「捲るぞ」
服を捲り上げるマリオは顔を顰めた。
「……何これ」
カービィは呆然と声を洩らして。
――ラディスの体は見るからにボロボロだった。擦り傷、切り傷、火傷に加え骨を幾つか折っているのが素人目でも分かる。残された体力を数値に表したなら一にも満たないことは確かだろう。
「内臓に複数の損傷が見られます」
傍らに膝を付いたゼルダは右手にほんのりと光を灯し、浮かせて肌を撫でるようにしながら言った。
「ここまで酷いのは初めてです」
「――当然だろ」
口を挟んだのはクレシスである。
「俺たちの種族は生まれつき体内に個人の電気回路を持っている」
歩み寄りながら、
「そいつを使えば」
語る。
「筋肉を伸縮させて一時的に能力を引き上げることも可能だ」