第十一章-前編-
「っ、」
距離が近い。
ジェットの音でさえ気付けなかったのは、それだけ放たれた炎とは隣り合わせで飛んでいたからなのだろう。程なくして機銃による射撃が双子を襲う。怯みを見せた弟の代わりにマスターは冷静な構えで瞳を青く瞬かせて。
「チッ」
アーウィンの操縦士、ファルコは舌打ちをこぼした。
「防がれたか」
「……みてぇだな」
もう一方のアーウィンの操縦士、フォックスと言葉を交わしながら双子の横をそれぞれ抜ける。無傷の双子にひと睨み置いて、その先で機体を捻りながら上昇。
ぐるっと一回転し振り返って降下しながら射撃を繰り出す。
「しつこいね」
クレイジーは尻目を向けた。
「どうせ無駄なのにな」
刹那、赤の雷撃が二機のアーウィンの間を裂くように放たれた。右と左、それぞれ逸れて躱したが乱雑に放たれる攻撃は止む気配を見せない。
「くっ」
「ファルコ!」
右翼を掠めて機体が傾く。そこへ更なる追撃を許して機体に回転をかけた。
黒煙を上げてぐるぐると回転しながら墜落していくアーウィン。
「ほらね」
クレイジーは目を細めた。
「――そいつはどうかな?」