第二章
出来の良い兄と、そうでない弟。
いつだって持て囃されるのは兄さんだったけど、僕にとってはそれが誇りだった。
「っは」
僕だけが知っている。
誰も知らない。兄さんは、いつからか勝利に拘り始めていたんだ。多くの期待を寄せられ、それが心の負担となって……
「く、」
これから先もそうだ。何も変わらない。
僕は兄さんの為に、弟として、名誉を傷付けない為に勝利する。例えどんなに汚い手段だったとしても、僕はただ、繰り返す。
二番目で構わないんだ。僕は兄さんのたった一人の弟で、理解者なんだから――
「ぁぐッ」
ラディスの繰り出した蹴りに防御が間に合わず、腹部に受けて地面に転がる。
体力の差は一目瞭然だ。だが、此方としても“相手が悪かった”と諦めて身を引くわけにはいかない。――ここを勝ち抜けば。
「……はああっ!」
兄さんに会えるんだから!