第十章-後編-
「弟の手を煩わせるわけにはいかない」
それに、とマスターは冷たく見据える。
「鬼ごっこにも飽きたしな」
状況とは裏腹に青く晴れ渡った空が瓦礫の積まれた街を照らしている。まるで世界までもが彼らに味方しているかのようだった。ダークリンクは陽の光に当てられて辛そうに浅く息を弾ませていたが不意に。
「……クソが」
小さくこぼして剣を片手にふらりと立ち上がった。
「よせっダークリンク!」
ラディスがはっと腕を立てて叫んだのも虚しく。
「ああぁああああッ!」
一心不乱に駆け出し、肩を並べたマスターとクレイジーの元へ。一定の距離が縮まったところで左上へ剣を大きく振りかぶり、右下へ向かって振り下ろす。
しかし剣は彼らの目の前で見えない壁によって阻まれた。怯まずに続け様右上へ剣を大きく振りかぶり今度は左下へ向かって振り下ろしたが甲高い金属音が鳴り響くだけで防壁はびくともしない。もう一度振り上げたところで、
「お前しつこい」
クレイジーの瞳がぼうっと赤黒く光を灯して。
刹那。赤の斬撃がダークリンクの正面、左下から右上に向かって一閃。
「ダークリンク!」
遅れて鮮血が噴き出すと当人も目を開いた。
マスターは小さく息を吐き出して、
「終わりだ」