第十章-後編-
なんで。
その言葉も感情も。
もっと広い世界に向けるべきだったのに。
「本当は知ってたんだ」
少女は柔らかな笑みを浮かべて言った。
「キミが普通じゃないってこと」
言葉は全て呑み込まれた。
その時ばかりは、自分でも驚くくらい静かに耳を傾けていて。
「寂しかったんだ」
胸の奥が、じわりと熱くなった。
「後悔はしてないよ。だってキミは、思っていた以上に沢山のものをくれた」
まるで締め付けられるように胸が苦しくなって、眉を寄せる。
「毎日が楽しかったんだ……」
少女の手が視界の端で動くのが見えて、思わずぱっと手に取った。
「……何だよ」