第十章-後編-
息を弾ませ、剣を片手に立ち尽くす。
此処は少女の家の中。人間とは異なる緑色をした血溜まりの中に突っ伏していたのは二匹の魔物スタルフォス。そして点々と赤を辿っていけばそこに、大きな爪痕を胸に負った彼女が仰向けに倒れていた。
なんで今まで気付けなかったのか。
本当は違うんだ。
異なる匂いを奴らが嗅ぎ付けないはずはないのに。
「……あ」
少女はうっすらと目を開いた。
「助けに来てくれたんだ」
膝を付いて抱き起こす。
「……明日も来るっつったろ」
分かっていた。
その手に抱いた命が長くないということくらい。
「そっか」
少女は目を細めて笑う。
なんでだよ。
「……ありがとう」