第十章-後編-
その次の日から俺は本から知識を得て、彼女に学業を教えた。
本当の回答は分からない。けれど二人で考えて生み出した答えが全てで、それまで視野の狭かった世界は確かに広がりを見せていた。殺し奪い取ったのでは文句を垂れるので盗んで書き写しては騒ぎになる前に戻して、この世界を書き写した地図に少女は子供のように目を輝かせて。
「海って広いんだね」
「……この辺りで溺れたら確実に死ぬな」
「なんでそこまで泳いだの?」
顔を見合わせて。
何となくおかしくなって。
――世界は、俺と彼女だけだった。
こんな運命もあったのかもな。
「そういえばキミの名前を聞いてないよ」
「どうせ俺くらいしかてめえに会わねえだろ」
「あ、そっか」
少女はまたいつものように照れ臭そうに笑って、
「でもいつか教えてね?」
そして。
あの日はやって来た。