第十章-後編-



「よお」

茸や草を摘み取っていた少女は顔を上げた。

「今日はてめえの欲しがりそうなもん持ってきてやったぜ」

木の上から飛び降りて見せつける、その手には一冊の血塗られた本。気まぐれで、夕暮れの小道を歩いていた餓鬼から殺し奪い取ったものだった。

「……いい」
「あぁ?」
「いらないよ」

少女はふいと顔を背ける。

「チッ」

舌打ちをこぼして、

「欲しい癖に」
「駄目なものは駄目」
「意地張ってんのか」
「常識だよ」

理解ができない。

「……捨てるの?」
「てめえがいらねえっつったんだろ」
「それはそうだけど」

本を見つめて少し考えた。

「……今日は帰る」
「怒ったの?」
「ちげーよてめえもさっさと家帰れ」

怪訝そうに見つめる少女を振り返ってにやりと笑った。

「また明日来てやるよ」
 
 
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