第十章-後編-



……彼の。全てを蔑んだ凍り付くような瞳に。

「え?」

ただそれだけが言葉として、口からこぼれ落ちた。

「……だから、過去を」

ぴしぴし、と壁に亀裂が走る。

「違う」

ダークリンクは無慈悲に吐き捨てた。

「見せられただけだ」


何処か遠くで何かの崩れるような音がして。

ほんの一瞬だけ、時が止まった。


「いい加減気付いたらどうだ御人好しの死に損ない」

ダークリンクの目の色は変わらない。

「奴ら双子はずる賢い。飛び抜けて兄の方はたちが悪い」

……違う。

「どんな顔をしていれば大人が甘やかしてくれるか、詰まる所、何を知っていれば相手が心を許すのか見抜いている」
「っそんなこと!」
「だったら何がどう違う?」

ぎくりとしてまた言葉を詰まらせた。

「てめえは他人の感情、事情に深入りする。情に厚いが情に弱い」

動悸が、止まない。

「……それが」

ダークリンクは剣を抜き取って、

「兄に付け込まれたてめえの弱点だ」
 
 
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