第十章-後編-
……生き、てるのか。
こんな状況で。こんな状態で。
浅く息を弾ませて辺りを警戒するダークリンクはそれからも暫く無言だった。
建物の空いた穴から外を覗き、目を凝らす。解放されてラディスは立っている彼の隣、壁に背を預けるような形で座り込んである疑問に頭を悩ませていた。
「……ダークリンク」
ラディスは静かに口を開く。
「どうして、」
「なんで殺さなかった!」
その苛立ちの対象は明らかに自分だった。
「隙なんていくらでもあっただろうが!」
俺とお前の理想とする。
幸せな、世界を。
「それはっ」
ラディスは言葉を詰まらせる。
「……俺には出来ない」
「何がだ」
「彼らを殺せない」
甘い。
「彼らはまだ子供なんだ!」
ぬるい。
「彼らの過去を見た」
「だから何だ」
「彼らには親も居なければ愛と呼べる全てはその兄弟だけだった」
ダークリンクはぎり、と奥歯を噛み締める。
「彼らは未熟で何が正しいかどうか分からないだけなんだ、だから」
次の瞬間。ラディスの真横、壁に剣を勢いよく突き立てられて。
「……それで」
ダークリンクは冷めた目で見下す。
「てめえは何を分かったつもりでいるんだ?」