第十章-後編-
彼、ダークリンクといえば。
今のリンクとは異なる先代の勇者の総合した能力を元にガノンドロフの悪しき力によって生み出された……謂わばリンクの偽物である。
「うるせーなぁ」
ひくっとダークリンクの口角が跳ねて。
「だったら何だってんだ? あ?」
あからさまな苛立ち。滲み出る殺気。
……何となく、想像した。
例えば自分が誰かの偽物として生み出されて。その人を希望とは遠い、血塗られた運命に括り付ける為に殺戮を繰り返し。
戦うことで。殺めることで。
自分は確かにこの世界を生きていると密かに痛感する――孤独感。
誰かが知るはずもない。
自分だけが、自分自身の理解者だ。
この感情だけは。
存在意義に渇望した醜いこの化け物は。
きっと、何処にも見つからない。
それは多分、俺だけだから。
……影の鏃が弾かれるが早くダークリンクは剣を抜き駆け出していた。飛んでくる刃をひらりと躱し剣で斬り捨て、弾き、マスターに斬りかかる。
金属音が響いて、半透明の壁に阻まれた。
「人間らしくなったじゃないかダークリンク」
「てめえは相変わらず嫌みな奴だなぁ? マスターハンド」
怒りが。憎しみが。
「……返せよ」
限界にまで膨らんだ殺気が――
「俺の望みを返せよ糞餓鬼がぁあッ!」