第十章-後編-



……どうして絶命の危機に陥ると景色はスローとなって映し出されるのだろう。

ラディスは迫り来る刃を見つめた。それでもただの一度もああもう駄目だといった希望を捨てきった目をせず。全ての終わりが近付いたその瞬間。


反射的に、瞼を瞑った。


辺りは絶望的な静けさに包み込まれた。

砂埃が立ち込める。


「クレイジー!」 


はっと目を開く。

「にい、さ」

兄が自身の目の前に飛び出した、次の瞬間。

「――ッッ!」

数百とも数えきれない黒い針の群れが襲いかかった。マスターは右手を突き出し、青いバリアを張ることで攻撃を阻止。


「……くくっ」


不敵で不愉快、且つ耳障り。

妖しく喉を鳴らして正体不明の黒い影が笑う。

「どういうつもりだ」

ようやく砂埃が晴れた頃。その影が姿を露わにするとマスターは顔を顰めた。

「……ダークリンク」
 
 
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