第十章-後編-



――まずい!

危険をいち早く察知してその場を飛び退くと、まるで串刺しにするかの如く先程ラディスが居た場所にあらゆる方角から刃が飛んできて地面に突き刺さった。その後足下に数本、連続して突き刺さり強く地面を蹴り出して瓦礫の上へ。

しかしその瓦礫もクレイジーの瞳が瞬くと途端に内側から砕け、その真下から鋭利な刃の先端が顔を出した。既の所で跳び上がり、ラディスはまた気配を察知して空中で振り返り腕を払って稲妻を放つ。一撃目は命中し砕けたが二撃目は。体を大きく反らして躱し、続け様地面に向かって稲妻を放つと反発力を利用してビル壁へ。

すぐに蹴り出して刃を入れ違いに躱し地面に片膝を付いて着地――

「ッ、が」

気付いた時にはもう目の前だった。

不気味に吊り上がった口角。具体的にはそれを確認するのが精一杯で次の瞬間には鳩尾に拳と続け様に回し蹴りを受け、吹き飛ばされていた。破壊を象徴する神の二撃に体は軋んだ声を上げて数メートル先の建物に背中から衝突。

鈍い音が聞こえた気がしたがそこまで頭が回らない。

「よっわ。それで本当にリーダー?」

お前を基準にしてたまるかと。ラディスは血を吐いて項垂れ、顔を上げる。

「……マスター」

もう視界がぼやけている。

遅れて降り立った影こそ名を呼んだその人だとは分かったのだが。


……なんで、何も言わないんだ……?
 
 
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